これまで、オートファジーの分解基質がリソソームへ運ばれる経路には、オートファゴソームが直接リソソームと融合する経路と、アンフィソームと呼ばれる中間体構造を形成したのち、リソソームと融合する経路の2経路が存在することが知られていましたが、この2経路の制御機構や存在意義などは分かっていませんでした。今回、アンフィソームとリソソームの融合を制御する新規因子としてPACSIN1を同定しました。さらに、線虫や培養細胞を用いた解析から、アンフィソームを経由する経路は神経変性疾患の原因となる凝集タンパク質の分解に重要な働きをすることが分かりました。今後この知見が神経変性疾患発症の予防や治療の新たな方法の確立につながることが期待されます
本研究成果は、米国科学誌「PLOS Genetics」に、7月1日(金)午前3時(日本時間)に公開されました。
当研究室研究生(当時)の山室さんらの論文がAutophagyに掲載されました。
絶食時におけるケトン体産生に脂肪細胞のオートファジー活性化が重要であることが明らかになりました。
これまでに、老化に伴う脂肪細胞でのオートファジー過剰が、脂肪肝の原因になりうることがわかっていました (Yamamuro et al., Nat Commun, 2020)。
老化のみならず絶食時においても、脂肪細胞のオートファジーの負の制御因子Rubicon (Matsunaga et al., Nat Cell Biol, 2009)が減少し、オートファジーが活性化することが判明しました。オートファジーを阻害すると、絶食時の脂肪萎縮や、肝臓での脂肪蓄積やケトン体産生が起こりにくくなることがわかりました。このことは、脂肪細胞のオートファジー活性化が、絶食時の一連の反応に重要であることを示しています。
脂肪細胞では老化と絶食で共通の機構が働いていることがわかったため、今回の研究を端緒として脂肪細胞老化の研究が加速されることが期待されます。
これまでオートファジーを介して細胞の老化を制御する機構は不明でしたが、今回、転写因子MondoAがオートファジーやミトコンドリアの機能を保つことで細胞の老化を遅延させることを発見しました。また、マウスやヒトの腎臓を用いた解析で、老化や急性腎障害後の慢性腎臓病進展の病態にMondoAが関与していることも明らかになりました。これにより、MondoAの活性化が個体の老化抑制や慢性腎臓病の進展など加齢性疾患の治療に応用されることが期待されます。
中村さんが領域代表を、吉森教授が領域アドバイザーを務める学術変革領域B ポストリソソームのHPが公開されました。
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