多数の分解酵素を持っているリソソームは、細胞内外の物質の分解を担う酸性オルガネラです。リソソームの膜は様々な因子 (シリカ、尿酸結晶など)によって損傷を受けることが報告されていますが、リソソームの内容物が細胞質に放出されることは、炎症、酸化ストレスなどを引き起こし、細胞にとって非常に有害です。リソソームの損傷は神経変性疾患などの病態発症や老化進行とも関わりがあり、近年注目を浴びています。
これまでに研究グループは、損傷を受けたリソソームがオートファジーによって選択的に隔離され分解・除去される現象を発見しました。また最近では、損傷したリソソームがどのようにオートファジーに認識されるのかという仕組みを解明しました。一方、リソファジー以外にも損傷リソソームの修復や生合成に働くリソソーム損傷応答経路が複数報告されました。そのため、これまでに用いていたリソファジーの評価法では、他の損傷応答経路を完全に区別することができないという問題に直面しました。
今回、研究グループは、 pHにより励起波長が変化する蛍光タンパク質mKeimaとリソソーム膜タンパク質TMEM192を融合して細胞に発現させることで、リソファジー活性を評価する実験系の開発に成功しました。また、従来の方法と比較すると、新規評価系ではより特異的にリソファジー活性をモニターすることができることを示しました。さらにこの新規評価系を用いることで、リソファジーの初期段階に機能する因子の同定に成功しました。今後は開発した新規評価系により、リソファジーの分子機構の解明が進むことが期待されます。
プレスリリース(阪大HP)