当研究室の田端桂介さんの論文がNature Communicationsに掲載されました
当研究室研究グループは、欧州分子生物学研究所(EMBL)のRainer Pepperkok教授らとの共同で、オートファジーの開始に必要な新たなメカニズムを明らかにしました。
オートファジーは、細胞内の不要な分子や構造物を分解する仕組みで、オートファゴソームという膜構造で囲み、リソソームで分解されます。このオートファゴソーム形成には複数のオートファジー関連タンパク質群が協調して機能することが知られています。
これまでに研究グループは、細胞内のミトコンドリアと近接する小胞体膜上でオートファゴソーム形成が起こることを明らかにし、オートファジー関連タンパク質群のひとつであるPI3K複合体がオートファゴソーム形成に必須であることを見出しています。そのPI3K複合体の活性を制御するのがULK1複合体です。ULK1複合体は、オートファジー開始時に細胞質からオートファゴソーム形成部位である小胞体膜上に移行することが知られていますが、そのメカニズムや重要性はよく分かっていませんでした。
今回、研究グループは、ZDHHC13という酵素がULK1をパルミトイル化し、オートファゴソーム形成部位に局在させることを発見しました。ULK1のパルミトイル化により、PI3K複合体のATG14Lタンパク質がリン酸化されることで、PI3K複合体の活性化、オートファジーの開始につながります。
オートファジーが開始する際の分子メカニズムの解明により、分子機構の解明が進むだけでなく、オートファジーが関連する老化進行および神経変性疾患などの病態発症、進行の理解につながることが期待されます。
本研究成果は、国際科学誌「Nature Communications」に、日本時間の8月22日(水)に公開されました。